ジリコーテづくし

2013年 制作

基本スペック

オーダーをいただいた当初は

ボディスタイル:Dタイプ

トップ・ブレイシング:アディロンダックスプルース

サイド&バック・指板・ブリッジ:ジリコーテ

ロゴ・ロゼッタ・ポジションマーク:黒蝶貝

といったご指定でした。

制作を開始し、打ち合わせを重ねる中で、とことん「ジリコーテと黒蝶貝」にこだわったギターを作る事になりました。

ヘッドプレート

サイドバックとは別に余剰の材があり、いい感じのサップ(白太杢)の部分を利用しました。

違う部分から木取りしたものですが、あたかも一ヶ所の杢を挽き割って表裏に使ったかのようなデザインを試みました。

ブリッジプレート

弦のボールエンドが当たる部分のパーツです。ローズウッドやメイプルが使われることが多く、広葉樹であれば基本的には何でもよいと思います。なので、ここにもジリコーテを使いました。

サイドブレイス

通常、ローズウッドかエボニーを使っていますが、ブリッジプレート同様に「この材でないと」という決まりはないので、これもジリコーテに。

余談ですが、トム・リベッキーは杢目の美しい端材を見ると「サイドブレイスに使える」とよく言っていました。アーチトップギターの場合は、サイドブレイスはほとんど見られることがない(というか、見えにくい)にも関わらず、です。

見えない部分こそが大事、という美意識の表れです。

ロゼッタ

ジリコーテと黒蝶貝の組み合わせです。ジリコーテは端材から切り出しました。杢の出し方を探り、サップが入った部分も試してみましたが、いま一つ合わなかったので、わりと落ち着いた杢の採用となりました。

ヒールキャップ

ロゴは黒蝶貝。ここに小さなロゴを入れたのは、これまで作ったギターの中では唯一です。

ポジションマーク

ジリコーテに黒蝶貝ドットポジションは目立たないのでは?と思いましたが、「さりげなく入っているのがいい」とのご要望で採用となりました。

ブリッジピン

黒蝶貝ドット入りエボニー製です。この仕様のプリメイドは存在しなかったので、特注しました。

塗装

塗料はニトロセルロースラッカー。

通常、下塗り(ウッドシーラー)・中塗り(サンディングシーラー)・上塗り(クリアラッカー)と、3種類のラッカーを塗り重ねていきます。単純に言えば、下塗りは吸込み止め、中塗りは肉持ち用、上塗りは光沢用、という目的で使い分けます。

最初からクリアラッカーだけを使ってもいいのですが、塗膜の厚みを出すためには、それなりの回数を吹き付けなければいけないので、サンディングシーラーで塗膜を形成し、その上で光沢用のクリアラッカーを使った方が、吹き付けの回数を減らすことができる、という理屈です。

しかしサンディングシーラーは、少ない回数で厚みを出せるという利点の反面、研磨剤が入っているため不透液で、吹き付ければ透明になるとはいうものの、クリア塗料に比べれば透明度が劣ります。

ジリコーテは唯一無二の杢が特徴。できるだけ高い透明度に仕上げ、その杢を際立たせたいと考えて、サンディングシーラーを省き、ウッドシーラーとクリアラッカーのみの塗装にしました。

レビュー

おそらく、これまで作ったギターの中では、一番「こだわり抜いた」ギターです。

オーナー様からは、納品して2か月ほど経った時点でレビューをいただきました。

「木目が自然に流れるように木取りが熟考されていて、塗装も木目が美しく見える仕上げになっています。

アディロンダックの表板と力木はまだ新品のカタさがありますが、単板ならではの澄んだ音色は、木材の特色がよく出た硬めで重厚な低音と、きらびやかな中高音が豪華さを醸し出します。

側・裏板ジリコーテと云うスペックは、よく見かけますが、指板・ブリッジ・ブリッジプレートまでジリコーテと云うのは、なかなか無いのではないでしょうか。

ジリコーテの肌理細かい質感は指板としてよく合い、はっきりとした発音が心地よいです。

これから弾き込んでカタさが取れた頃の音色が楽しみです。」

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