逆カポタスト?

OM 2016年制作
トップ :ジャーマンスプルース
フィンガーボード&ブリッジ:ブラジリアンローズウッド

あるお客様との会話:

「カポタストを逆に取りつける事はできませんかねぇ~?」

「…6弦側からでも、1弦側からでも、取りつけられると思いますが…」

「そういう事ではなくて、キーを下げるためのカポタストは、ないのかな、と」

「そういうのは…ないと思います…聞いた事ないです」

「キーを下げたくて、半音とか一音とか弦を緩めて弾いているんですが、張りが無くなるし、ビレも出たりして…だから、逆のカポタストがあればいいと思ったんですよ」

「それなら、弦高を上げるとか、ミディアムゲージにするとかをやれば、ある程度解決すると思いますけど」

「それだと弾きにくくなるでしょ?それは嫌なんです」

「ちなみに、お使いのギターのサイズとスケールは?」

「OMで、24.9インチです」

「確かに、そのスケールだとダウンチューニングは厳しいですかね」

「何とかなりませんか?」

「フィンガーピッカーの方たちはオープンチューニングを多用するので、少し長めの25.7インチスケールのギターを使う事が多いみたいですが、それだといいんじゃないですか?」

「そのスケールで、OMタイプって、ありますか?」

「普通はスモールジャンボとかDタイプで、OMサイズは聞いた事ないです、私の知る限り」

「じゃ、作ってもらえます?」

「えっ…それは…作れますけど…25.7インチのOMって、作った事はないです」

「だって、売ってないんでしょ?」

「まぁ、探せばあるとは思いますけど…でも、大手メーカーでは、ないでしょうね」

「だったら、作ってください、せっかくのご縁だし」

…という感じでオーダーが決まり、制作したギターです。

サップ(白太)入りのブラジリアンローズウッド
サイドにもしっかりサップが入っています

材はオーダーの詳細をつめていく中で「ブラジリアンローズウッドがあるのなら、せっかく作るんだから、それで」「だったら、トップをジャーマンスプルースにすると、いわゆる『王道』のサウンド、と言われたりしますけど」「では、それで」ということで決まりました。

材料名を挙げると、いかにも材料がメインという感じですが、このオーダーに関しては材料の選択は副次的なもので、あくまでもスケール優先、つまり「自分の演奏スタイル」にフォーカスして作ったギターなのです。

もちろん「初めに材料ありき」もオーダーの魅力ですが、それとは逆の方向からのスタートでした。

「自分がギターに合わせるのではなく、自分に合わせてギターを作る」

これがオーダーメイドの本質(の一つ)だと思います。

作ってみない事には何とも言えない部分も多かったのですが、結果は良好。ご満足いただき、胸をなでおろすことができました。